コロナ禍ですっかり出番を失ってしまったANAのハワイ路線専用機フライングホヌ(A380)のチャーターフライトに搭乗しました。
成田空港から成田空港まで機内食やシートなどを楽しみながら、3時間半のフライトです。
2020年夏から始まったこの国内チャーターフライト。すでに10回以上開催されていますが、抽選の倍率はなんと150倍。当初ファーストクラスや窓側ビジネスクラス狙いで応募していましたが全く当選しなかったので、あきらめて通路側ビジネスクラス狙いでようやく2021年8月7日(土)のフライトに当選しました。
フライトは成田空港から。ターミナルは、オリンピック期間中とは思えないほど、閑散としています。
オリンピック閉会式を翌日に控え、選手や関係者を案内するボランティアスタッフの姿が見られました。また一部の区画がオリンピック関係者専用となっていました。チェックインカウンターから一番近いトイレもオリンピック関係者専用で不便でした。
ANAのA380、コロナ禍以前はここ成田からNH182、NH184で毎晩ハワイ ホノルルNHLへ運航していました。
需要がなくなってしまった超大型旅客機A380を使用した遊覧飛行が、去年から行われています。今回のフライト、料金はファーストクラス10万8000円。ビジネスクラス窓側69,800円、通路側59,800円。プレミアムエコノミー窓側49,800円通路側39,800円。エコノミークラス窓側44,800円、窓側(翼の上)39,800円、通路側29,800円。決して安くはない金額ですが、毎回申し込み者が殺到する人気イベントです。
このフライトは、国内線扱いになります。もちろんパスポート不要。第1ターミナルの国内線出発ロビーへ。このターミナルから出発する国内線は欠航が相次ぎこの日ピーチのみ。ANAのカウンターはHONUチャーターフライト搭乗者専用の状態。
案内板には行き先が「成田」という、知らない人が見たら首をかしげるフライトが表示されています。
エコノミークラスとプレミアムエコノミーは10時からチェックイン。ビジネスクラス、ファーストクラスは10時50分からのチェックインとなります。このフライトにダイヤモンドやプラチナ、SFCの特典や優先はありません。
チェックインカウンターへ。右のファーストクラスはわずか8人。受付も椅子付き。なお、今回のフライトで荷物を預けることはできません。
チェックインカウンターで搭乗券と機内Wi-Fiの無料クーポンをもらいます。久しぶりの紙のチケット。「C」の文字がまぶしいです。システムの都合上「LOUNGE INVITATION」と自動的に印字されるようですが、成田空港国内線のANA ARRIVAL LOUNGEは現在閉鎖中のため利用できません。
保安検査通過前に、クラスごとに記念品をもらいます。
ANA FLYING HONUオリジナル商品の事前販売を申し込んでいたので、併せていただきます。
「キーワード」を伝えると飛行機風船がもらえるキャンペーンも。ホヌとは関係のないTOKYO 2020のデザインでした。
ビジネスクラスのグッズは御覧の通り。ANAオリジナル フレッドシーガルコラボレーション アメニティキット、フェイスタオル、HONUリュック。モデルプレーンは別途購入。5,000円。
アメニティの中身はトートバッグ、アイマスク、耳栓、歯ブラシ。
REMOVE BEFORE FLIGHTのタグは3号機ラーのデザインでした。搭乗証明書をいただきましたが、今日の機材がわからなかったので、GSさんに聞くと「2号機のカイ」との回答。
保安検査通過後のANAのお土産屋さんには、HONUグッズの販売。事前販売で購入したHONUモデルプレーンとここで売っているHONUモデルプレーンの、ケース以外の違いが分からず。
国際線ターミナルは閑散としていましたが、HONUの搭乗者は大勢。500人以上乗せることができる機材で、満席ではなかったようですが、300人ぐらいはいたんじゃないでしょうか。
搭乗口の案内。みなさん記念撮影されています。
国際線と同じく、出発の1時間前には搭乗を開始します。フライトは3時間半ですが、トータル5時間ぐらいは機体やシートを満喫できます。
機体は沖止めされており、搭乗クラスごとにバスで移動
JA382A 2号機カイくんの姿が見えてきました。奥にはJA381A 1号機ラニ君も見えます。
それぞれ旧C滑走路計画の跡地427番スポット、428番スポットに駐機しています。
なぜか使用する機材と聞いていた2号機を通り過ぎて、1号機のJA831Aラニの横へ
こちらに先に出発したバスがいます。本日使用する機材、先にGSさんから聞いてた情報と異なり、1号機のJA831Aラニのようです。JA831Aは2019年3月21日にトゥールーズからデリバリーされた機体。ANAが導入するA380 3機のうち、初号機になります。
たった3機しかない機体を運用すると、整備コストは上がります。パイロットも、免許の関係上、機体を掛け持ちすることができないので、A380専属のパイロットが必要になります。このパイロットは当分ハワイにしかいけません。
そんなことすると非効率なのはANAも百も承知。スカイマークがA380を6機発注したあと経営破綻。3機分がほぼ完成していましたが、発注を取り消しました。製造してしまった機体は結局エミレーツ航空が買い取りましたが、莫大な違約金が残りました。ANAがスカイマークを支援すること表明したため、債権者であるエアバスからA380の購入が条件だと提示された、というのが通説となっています。
3機しかない巨大な飛行機を、唯一活用できそうだったのがハワイ路線。A380をハワイ路線に投入し、これまでANAのハワイ路線には無かったファーストクラスを導入したり、カウチシートの導入で、裕福層や家族層を取り込んでJALの牙城のハワイ路線を崩しにきました。そんな理由でハワイ色が前面に出された機体です。
ANAのA380は3機ともデザイン・色が異なっており、それぞれ「ラニ(ハワイ語で空)」「カイ(ハワイ語で海)」「ラー(ハワイ語で太陽)」と愛称がつけられています。
A380はわずか250機ほどで製造終了。コロナによる航空需要の激減もあって、世界中で早期に退役が進んでいます。それでもB777の早期待機を進めるANAがA380を手放さないのは、ANAのA380がハワイ路線専用機だから。リモートワークの普及で出張需要がコロナ以前に戻ることはないといわれていますが、観光需要は別。コロナが落ち付けば、LCCや観光需要はもとに戻ると予想されています。
とはいえ現在は出番がありません。ホヌが最後にハワイへ行ったのは約500日前。整備の都合で90日に1回は飛行しないと点検項目が増えて余計なコストがかかるので、空席で飛ばしていたところ、だったら乗せてくれ、という航空ファンの強い声によって今回のようなチャーターフライトが実現しています。
オール2階建てのA380。成田の一部のスポットでは2階に直接PBBを接続することもできますが、ここでは1階から搭乗となります。
奥には先ほど通り過ぎた2号機の姿も。3号機は書類上はエアバスから受領したものの、今飛んでこられても出番がないので、エアバスのトゥールーズ工場でずっと保管されています。
パイロットの姿も見えました。旅客機のパイロットは機体を掛け持ちすることができません。別の機体を操縦するには、ライセンスの書き換えが必要になります。たまにこうやって遊覧飛行するだけのANAのA380。今、A380のパイロットは、何してるんでしょうか?
今回のようなチャーターフライトに申し込むような方々は、全員が多かれ少なかれ飛行機好き。皆さんすぐに乗るはずもなく、機体の写真を撮影します。
ずっと撮ってるわけにもいかないので搭乗します。
巨大な機体です。民間旅客機としては世界最大。4発エンジンも日本ではA380のみ。
1階から搭乗。ANAのA380は1階はすべてエコノミークラスです。
個人的にはA380はマレーシア航空のMH88以来、4回目です。
階段で2階へ
この階段もドバイから乗ったエミレーツのEK316便以来です。
バーカウンターには、CAさんらによる飾りつけ
ご搭乗頂きありがとうございます。A380での空の旅、どうぞごゆっくりお楽しみください。
2021.8.7 NH2030 NRT-NRT
ファーストクラスを通り過ぎます。
ANAのA380では8席のファーストクラスがあります。
ビジネスクラスへ
1列に4席。すべてのシートが通路に面しています。
A380のビジネスクラスのシート。ANA BUSINESS STAGGERED。
ボーイング777では個室のようなThe Roomへの改修が進んでいますが、A380は1世代前のシートとなります。
ビジネスクラスの座席数は56席。なぜか空席もありました。空席に規則性がなかったのでソーシャルディスタンス確保というわけでもなさそうです。急なキャンセル分でしょうか?今回のチャーターフライトの倍率は公表さていませんが、初回は150倍にもなりました。窓側席も空いていたので、差額を払うので座席を移動したかったです。
リモコンとLEDパーソナルライト、USB電源、AC電源。ヘッドホン。
トラックパッドのようにモニタを操作できます。
毛布、スリッパは座席の上に。
中央の席だったので、外の景色は楽しめず。移動してドアの窓から外を覗くと、横には2号機カイくん。
マットや枕の用意はありませんが、フルフラットにしてシートを楽しむことができます。せっかく乗ってるので、寝てしまうのはもったいないです。
安全のしおり
チャーターフライト用のドリンクメニュー。国際線ビジネスクラスのものではなく、国内線プレミアムクラスで提供しているアルコールのようです。緊急事態宣言が出てますが、飛び立ってしまえばアルコールの提供があります。
モニターは18インチ。タッチパネル。
国際線の機材ですが、今日のフライトではA320neoやA321neoと同じく国内線のコンテンツとなっています。
A380の機内エンタメといえば、この垂直尾翼からの機外カメラ。
以前成田からドバイへ行った時に乗ったA380では、夜の離陸だったため何も見えませんでしたが、今回は日中のフライト。カメラで外の景色を楽しみます。
フライトマップ。機体のモデルはちゃんとJA381Aの塗装になっています。
CAさんは、20名も乗務。加えてANAトラベラーズのスタッフも多数いたため、結構なおもてなし。
しばらくして全員の搭乗が終わったようで「せっとすらいどばぁ」のアナウンス。ビデオの上映です。他路線の歌舞伎のビデオではなく、ハワイ路線専用のもの。ラニ、カイ、ラーの着ぐるみが、かわいらしく説明します。
駐機スポット近くにある成田空港反対派の鉄塔をよけて、タキシング。
2号機の姿
16Rから離陸。無線で成田タワー聞いていると、パイロットの「行ってきます」と成田タワーからの「いってらっしゃい」が印象的でした。
機体はとりあえずヨーロッパ路線と同じくV15を通って新潟に向かうようです。この時点では、機体がどこを飛ぶのかアナウンスがありません。ミステリーツアー状態です。過去のフライトでは、北海道や鹿児島などに向かっていたようです。
Wi-Fiが無料で利用できるので、Flightradar24を使って自機を追跡します。機長からアナウンスがあり、新潟を通過後、青森、函館、稚内に向かい、女満別、釧路、旭川を経由して成田に戻ると説明がありました。南は台風が来ているため、北側のコースとなったようです。またこのフライト中、FlightradarのMost tracked flightsの1位はずっとこのNH2030便がマークしていました。
巡航高度到達後、すぐに機内食のサービスが始まりました。
機内食。種類は1種類のみ、和食・洋食は選べません。ハワイ路線で実際に提供しているメニューです。
久しぶりの機内食、それもビジネスクラス。テンションが上がります。食事中はモニターで強制的にハワイの観光スポット紹介ビデオが流れます。
ドリンクはスパークリングワインをオーダー。ブリュット ダルジャン シャルドネ。国内線プレミアムクラスで提供しているものですが、順次ヴーヴ・オリヴィエ・ブリュットに切り替わるようです。
メインは牛フィレ肉のステーキ ベルシーソース
食後に好きなソフトドリンクをオーダーできました。
パン
バーカウンターやスナックの提供はありません。
飛行せず、食事を提供するのみのレストランイベントでは機体の見学ができますが、保安上の都合でこのチャーターフライトでは他のクラスを見て回ることはできません。シートで思い思いに過ごします。
トイレには歯ブラシやマウスウォッシュが常備
空席のシートから外の様子を撮影。A380は窓の2重構造が分厚いので外の撮影はしづらいです。
高度39,000はフィート。夢れもなく、静かで快適です。
北海道の稚内へ向かいます。
稚内で南へUターン。釧路から進路を西へ。東向きは奇数の高度を飛行、西向きは偶数というルールがあるので、釧路で40,000フィートへ上昇。
ANAトラベラーズのスタッフによるクイズ大会が始まりました。これは余興で景品などはありません。透けてて答えが見えました。
フライングホヌ初号機は21日掛かりで塗装を仕上げました。さて、何人で作業したでしょうか?
フライングホヌを輪切りにした場合、断面の形はどうなるでしょうか?
フライングホヌの操縦席から直接視認できるのは何メートル先からでしょうか?
つづいて抽選会。景品ごとに座席番号を読み上げられ、プレゼントが当たります。
マリオットホテルのトートバッグ
スヌーピーのトラベルポーチ
ANA旅行券5,000円分、1万円分
抽選会が終わると、フライトも残りわずか。機内の照明がレインボーになりました。CAさんからのアナウンスで目的地の天候の案内がありますが、「目的地、ホノルルの天候は・・・あっ、失礼しました。目的地、成田の天候は~」と、わざとらしく間違える演出も。
機体番号が入った搭乗証明書を再配布。1枚1枚手書きでした。
3時間半のフライト。成田16Rに着陸です。
本日の飛行ルート
ファーストクラスから先に案内。つづいてビジネスクラス。
パイロットが手を振ってくれました。
426番スポットに駐機したため、2号機が反対側に。パッセンジャーステップが無く撮影しやすくなりました。
バスに乗るまで、皆様ギリギリまで撮影されていました。
帰りは国内線の到着バスラウンジへ。一般客と混じって解散です。
ハワイ路線に503日ぶりに復帰するフライングホヌですが、まだまだ就航日は限定的。今後もこのチャーターフライトが多数実施されます。春先にはセントレアや関空からのフライトも開催されました。9月には那覇や千歳へのツアーも予定されています。
需要はあるのでぜひとも何度も開催してほしいイベントですが、安売りしてしますとA380のブランドが落ちてしまうのも考えどころ。実際ANAのA380に乗るためだけにハワイに行こうかとも考えていましたが、今回のフライトで満足してしまいました。難しいところです。